日本の神社参拝の基本は「二礼二拍手一礼」ですが、一部の格式高い神社では「二礼四拍手一礼」という作法が用いられています。
この四拍手の作法は、神様に対しより丁重に、最高の敬意を払うことを意味します。
本記事では、「二礼四拍手一礼(二拝四拍手一拝)」を正式な参拝作法とする代表的な神社と、その具体的な参拝手順、そしてなぜ二拍手と異なるのかという深い理由を詳しく解説します。
1. 【基本】二礼四拍手一礼とは?二拍手との違いを解説
「二礼四拍手一礼(にれい・よんはくしゅ・いちれい)」とは、神社での拝礼作法の一つです。
文字通り、深いお辞儀(礼または拝)を二回、拍手を四回、最後に深いお辞儀を一回行うという流れを指します。
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神社参拝の基本「二礼二拍手一礼」との決定的な違い
一般的な神社で用いられる「二礼二拍手一礼」は、戦後、神社庁が参拝作法を統一するために定めた基本的な作法です。
一方、四拍手は、その神社が古くから伝わる作法や、祀られている神様の格式などに基づき、基本の二拍手よりもさらに回数を増やして丁寧に行うものとして現在も継承されています。
作法名 | 礼(拝)の回数 | 拍手の回数 | 特徴 |
---|---|---|---|
二礼二拍手一礼 | 2回 | 2回 | 全国共通の標準的な作法 |
二礼四拍手一礼 | 2回 | 4回 | より丁重な、特定の神社で用いられる作法 |
四拍手は「より丁重」「最高の敬意」を示す作法
四拍手は、神様に対する敬意や感謝を「二拍手」の倍の回数で表すことで、最大限の丁重さを示す意味合いがあります。
特に、古来より重要な神様が祀られてきた神社で採用されていることが多いのが特徴です。
2. 二礼四拍手一礼で参拝する主要な神社リスト
日本全国で「二礼四拍手一礼」を正式な作法とする代表的な神社は、以下の三社が挙げられます。
いずれも、日本の歴史や信仰において極めて重要な役割を果たしてきた格式高い神社です。
- 出雲大社(いずもおおやしろ/いずもたいしゃ):島根県出雲市
- 宇佐神宮(うさじんぐう):大分県宇佐市
- 彌彦神社(やひこじんじゃ):新潟県西蒲原郡弥彦村
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3. 【聖地】二礼四拍手の総本山:出雲大社(島根県)
「縁結びの神様」として知られる出雲大社は、四拍手の作法が最も有名で、その理由が明確に伝えられています。
なぜ出雲大社は四拍手なのか?「八」に秘められた意味
出雲大社の例祭(勅祭)では、実は「八拍手」というさらに回数の多い作法が用いられます。
無限を表す「八拍手」と、日常の「四拍手」
- 数字の「八」は、古来より末広がりで「限りない」「無限」を意味する縁起の良い数とされています。
- 年に一度の最も重要な祭典では、神様に対し限りない拍手(八拍手)をもって讃えます。
- 平素、日常の参拝においては、その半分の四拍手をもって神様を讃える作法が採用されています。
これは、出雲大社が神様を最高に讃え、敬意を払うことを重んじる姿勢の表れと言えます。
4. 【古儀】八幡様の総本宮:宇佐神宮(大分県)
全国に約4万社ある八幡様の総本宮である宇佐神宮もまた、二礼四拍手一礼を正式な作法としています。
宇佐神宮の四拍手は、古くから伝わる古儀(こぎ)として継承されてきました。
この地が持つ歴史的な重みや、皇室とも関わりの深い八幡大神の神威に対する丁重な拝礼作法として、今に伝えられています。
5. 【越後一宮】弥彦の神様を丁重に拝する:彌彦神社(新潟県)
越後一宮(いちのみや)として知られる彌彦神社も、他の神社と異なり四拍手の作法で行います。
彌彦神社では、この四拍手は「二礼二拍手一礼の作法にて参拝されても結構」としつつも、「より丁重に御神前を拝する心を表す作法」として、代々の神職などが伝えてきたものと説明されています。
地域で深く信仰されてきた「おやひこさま」に対し、最高の敬意を払う気持ちが込められています。
6. 【手順解説】二礼四拍手一礼の正しい作法とマナー
四拍手という点を除けば、一般的な参拝作法と基本は同じです。以下の手順で、心を込めて参拝しましょう。
参拝前の準備(手水舎での清め方)
- 右手に柄杓を持ち、水を汲んで左手を清める。
- 柄杓を持ち替えて右手を清める。
- 再び柄杓を右手に持ち替え、左手に水を受けて口を軽くすすぐ。(柄杓に直接口をつけない)
- 左手を再び清め、最後に柄杓を立てて残りの水で柄を洗い流し、元の場所に戻す。
お賽銭を投げた後の具体的な手順(二拝→四拍手→一拝)
- 会釈・お賽銭・鈴を鳴らす:神前に進み、軽く会釈をしてお賽銭を静かに入れます。鈴があれば鳴らし、神様にご挨拶をします。
- 二拝(深いお辞儀を二回):背筋を伸ばし、腰を90度くらいに曲げて深く頭を下げます。これを二回繰り返します。
- 四拍手(柏手を四回):胸の高さで両手を合わせ、右手を少し下にずらしてから、肩幅程度に両手を開き、四回打ち合わせます。手を合わせ、お祈りします。
- 一拝(深いお辞儀を一回):最後にもう一度、腰を90度くらいに曲げて深くお辞儀をします。
- 会釈:神前から退く際にも、軽く会釈をしてから退きます。
拍手をする際の注意点(音の強さ、手の合わせ方)
拍手は、神様を讃え、自らの穢れを祓うためのものです。
心を込めて、あまり力を入れすぎず、両手が綺麗に響き合うように打ちましょう。
四回目は手を合わせたまま、神様に感謝と祈りを捧げます。
7. なぜ二拍手ではなく四拍手なのか?その深い理由を紐解く
日本の神道における拍手(柏手)の回数には、様々な意味が込められています。
古代の神道における拍手の回数
拍手の回数は、時代や地域、そして祭祀によって異なっていました。
二拍手、三拍手、四拍手、そして八拍手といった多様な作法が存在していたとされています。
- 二拍手は、一般的に「天と地」や「陰と陽」を象徴すると解釈され、バランスの取れた基本的な拝礼作法とされています。
- 四拍手は、「八」の略式であるという理由の他に、「東西南北の四方」や、大国主命の「四魂(しこん:荒魂・和魂・幸魂・奇魂)」といった、より広範な意味や深い神学的要素と結びつけられることがあります。つまり、四方全ての神様、あるいは神様の持つ全ての側面に対し、敬意を払うという意味合いです。
神社庁が統一した「二拍手」と、古来の作法を残す神社
明治時代以降、国の政策や戦後の神社庁によって参拝作法が「二礼二拍手一礼」に統一されましたが、出雲大社や宇佐神宮などの一部の神社は、その歴史的・宗教的な格式から、古来の作法や神社の由緒に基づいた特別な作法(四拍手)を残すことが認められています。
四拍手の神社を訪れることは、単に参拝するだけでなく、その神社の深い歴史と独自の文化に触れる貴重な体験となるでしょう。
8. 【おまけ】八拍手はどこで?さらに丁重な参拝作法
先述の通り、八拍手は四拍手よりもさらに丁重な作法であり、「無限の敬意」を意味します。
- 出雲大社:毎年5月14日に行われる例祭(勅祭)など、最も重要な祭典の際に、神職によって八拍手の作法が執り行われます。
- 伊勢神宮:一般の参拝者は二礼二拍手一礼ですが、神宮祭祀など精進潔斎を行った神職は「八度拝八開手(やたびはいやひらて)」という、八回深い礼をし、八回拍手をするという作法を行う場合があります。
一般の参拝者としては、普段の参拝で八拍手を行う必要はありませんが、こうした最も厳粛な儀式が存在することを知っておくと、神社の奥深さをより感じられるでしょう。