神在月に出雲大社に行かない神様とは?

出雲地方でいう神在月(他県では神無月)に、出雲大社に行かないで地元の神社に留まる神様もいらっしゃるようです。

神在月に出雲大社に行かない神様たち

神無月(かんなづき)は神様が不在になる月――そう言われる一方、出雲では「神在月(かみありづき)」と呼ばれ、全国の神々が出雲大社に集まると信じられています。

では、各地の神社には本当に神様がいないのでしょうか?

実は、神々の不在中にも地域を守る「留守神(るすがみ)」と呼ばれる神々がいるのです。

本記事では、神在月の意味から、代表的な留守神、地域信仰の事例、そして神在月の参拝方法までを詳しく解説します。

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神在月と神無月──読み替えと起源

「神無月(かんなづき)」は旧暦10月を指し、「神が不在になる月」と読まれます。

しかし出雲地方ではこの月を「神在月(かみありづき)」と呼び、全国の神々が集う特別な月とされます。

『古事記』や『出雲国造神賀詞』などの古代文献では、出雲が神議(かみはかり)の地とされ、神迎神事・神在祭・神等去出祭といった神事が今も行われています。

神々と共に過ごす時間と空間としての「神在月」は、信仰と文化が融合した重要な季節なのです。

留守神(るすがみ)とは何か

留守神とは、全国の神々が出雲へ向かう間、地元を守ると信じられている神々のことです。

中世の文献『山王絵詞』にもその概念が登場し、早くから人々の不安や信仰心が形になっていたことが伺えます。

神道において神々は霊的な存在であり、時間や空間に縛られません。

「神在月でも神社には神様が存在する」という立場も広く支持されています。

留守神という考え方は、地域信仰や人々の安心感の象徴でもあるのです。

全国の代表的な留守神の例と地域信仰

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恵比寿神(えびすがみ)

商売繁盛・漁業守護の神である恵比寿神は、耳が遠くて神議に気づかなかった、あるいは人々のそばに残るため出雲に行かなかったという説があります。

特に、関西地方では神無月に「えびす講」というお祭りが行われ、恵比寿神を奉る行事が行われます。

荒神(こうじん/竈神)

竈(かまど)の神として、家を守る神格である荒神。

出雲に向かわず、家の中に常在する神としての性格が強く、西日本では荒神棚に日々の感謝を捧げる風習があります。

金毘羅神(こんぴらしん)

航海守護の神である金毘羅神は、海の安全を守るために出雲には赴かないという伝承も。

金刀比羅宮をはじめ、海辺の地域では“海の留守神”として信仰されています。

地主神(じぬしのかみ)

地元の土地を守る神様で、各地域や土地に深く結びついた存在です。

地主神も出雲に赴かず、その土地を守るために残るとされています。

地域の平穏や安全を保つために、神在月でもその場を離れないと考えられています。

天照大神(あまてらすおおみかみ)

伊勢神宮の主祭神である天照大神も、一般的には出雲に行かないとされています。

天照大神は日本の最高神であり、伊勢神宮に留まり、日本全体を見守ると考えられています。

伏見稲荷大社の稲荷神(いなりがみ)

商業や農業、五穀豊穣を守護する神様である稲荷神も、各地の稲荷神社を守るために出雲には行かず、各地に留まるとされています。

特に、京都の伏見稲荷大社を中心に信仰される稲荷神は、その土地に留まることが多いです。

その他の留守神と地域例

地域によっては大黒神、道祖神、あるいは名もない土地神が留守神とされることもあります。

東北や北陸の一部では「留守番神社」と名のつく神社も存在し、地元で神様が残っていることを明確に示す信仰が根付いています。

神在月でも参拝できる?実践ガイド

「神在月に神社へ参拝していいのか?」という疑問に対しては、「参拝して問題ない」というのが神職の共通した意見です。

神々は同時に複数の場所に存在でき、出雲に集う一方で地域も見守っています。

特に留守神信仰が残る地域では、「神在月だからこそ感謝の祈りを捧げるべき」とされることもあります。

参拝の際には、以下の点を意識してみましょう。

  • 留守を預かってくれている神様への感謝の気持ちを込める
  • 地元の神社を再認識する機会と捉える
  • 静かに心を込めた祈りを捧げることを大切にする

留守神めぐりルート案

神在月に出雲大社を訪れるなら、留守神にゆかりのある神社も巡ることで、神道全体への理解が深まります。

1日目:出雲中心部

  • 出雲大社:神在祭の中心、神楽殿や本殿巡拝
  • 稲佐の浜:神迎神事の舞台、神々を迎える聖地

2日目:松江・美保関・境港

  • 佐太神社:地元神として“残留神”の信仰が見られる
  • 美保神社:事代主命を祀る。恵比寿神と習合し、留守神の性格を持つ
  • 境港の恵比寿神社:小規模ながら地域の漁業信仰が残る

このようなルートを辿ることで、出雲で集う神々と地元で守る神々という「陰陽の信仰」を体感できるはずです。

まとめ

神在月は、出雲に神々が集うという神話的時間の中で、日本人の信仰心が息づく特別な月です。

一方で、各地には神々の留守を預かる「留守神」の存在が信じられ、今も地域の人々に大切にされています。

出雲参拝とあわせて地元の神社を訪れることは、日本的信仰をより深く体験する旅路となるでしょう。

この神在月、ぜひ神々とのつながりを感じる参拝をしてみてはいかがでしょうか。