神在月、最後の儀式――万九千神社の「神等去出祭」で“神送り”を体験してきました

出雲だけ「神在月」と呼ばれる理由、知っていますか?

10月といえば「神無月(かんなづき)」という言葉が思い浮かびますよね。

でも、実は島根県の出雲地方だけは、この月を「神在月(かみありづき)」と呼ぶんです。

その理由は、とても神秘的でロマンのあるお話に由来しています。

出雲の地には、「全国の神様たちがこの時期に集まってくる」という伝承があり、実際に多くの神社で特別な神事が行われています。

つまり、全国的には神様がいない「神無月」ですが、出雲だけは神様が集っているから「神在月」。

この違い、なんだか素敵ですよね。

そんな“神様たちの会議”の締めくくりが行われるのが、万九千(まんくせん)神社。

あまり観光パンフレットには載っていませんが、ここでは「神等去出祭(からさでさい)」という、とても大切な神事が毎年行われているのです。

今回は、昨年(令和6年)にその神聖な儀式を、実際に足を運んで体験してきたレポートをお届けします。

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万九千神社ってどんな場所?

万九千神社は、島根県出雲市斐川町にある、静かで落ち着いた雰囲気の神社です。

斐伊川(ひいかわ)のほとりに位置し、森の中にひっそりとたたずんでいます。

規模は大きくありませんが、神話の舞台としての歴史や意味はとても深く、地元の方々に大切にされている神社です。

この神社の最大の特徴は、「神送りの神事」が行われる場所であること。

出雲大社などで神々を“迎える”神事がある一方で、万九千神社では“送り出す”役割を果たしているのです。

つまり、神在月のフィナーレを飾る、とても重要な舞台。それがこの万九千神社なんです。

神等去出祭(からさでさい)とは?

神等去出祭(からさでさい)は、毎年旧暦の10月26日(現在の暦では11月下旬ごろ)に行われます。

2025年(令和7年)は、12月15日(月)が 旧暦の10月26日に当たります。

→ 2025年(令和7年)のスケジュールは、こちらを参照してください。

これは、神在月に出雲へ集まった神様たちが、それぞれの土地に戻っていくための「お見送りの神事」です。

この祭りは、日が暮れた夕方から始まります。あたりはすっかり暗くなっていて、参道には提灯が並び、やさしい光に包まれます。

神職の方々が白装束に身を包み、厳かな表情で一つ一つの所作を丁寧に行っていく様子は、見ているだけで背筋が伸びるような気持ちになります。

神様たちを送り出すための祝詞(のりと)が奏上され、神楽(かぐら)という舞が奉納されます。

笛の音、太鼓の響き、そして神職の動きのすべてが、まるで時代を超えた神話の世界にいるような感覚を与えてくれるのです。

観光的な派手さはありませんが、それがかえって「本物の神事」としての空気を感じさせてくれます。

こんな方におすすめです

  • 静かな神事にふれてみたい方
  • 派手なお祭りよりも、心が落ち着く体験がしたい方
  • 日本の神話や歴史に興味がある方
  • 出雲旅行を文化的な視点で楽しみたい方

「神社のことはあまり詳しくないけれど…」という方でもまったく問題ありません。

このお祭りに参加するために必要な知識や準備は特にありませんし、地元の方々もとても優しく迎えてくれます。

わからないことがあっても、困ることはほとんどありません。

また、神事の最中は静かに見守るだけでOK。

写真撮影は原則控えめに(神社によっては撮影禁止の場合もあるため、事前に確認しましょう)。

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実際に参加してみて感じたこと

私自身、神事に参加するのは今回(令和6年)が初めてでした。

最初は少し緊張しましたが、始まってみるとその場の空気に自然と馴染んでいくのを感じました。

提灯の明かりがゆらゆらと揺れる参道、笛や太鼓の音がしんと静まり返った空気に溶け込むように響いて、とても幻想的でした。

途中、冷たい夜風が吹く場面もありましたが、それがかえって「神様が通られたのかな」と感じられるような、不思議な体験でした。

最後に神職の方々が深々と一礼し、神様たちを見送るその瞬間。

どこからか風が吹いて、木の葉がさらさらと舞い上がるのを見て、本当に神様が帰っていったんだな…と、胸が温かくなりました。

服装・持ち物アドバイス

この神事は夜に行われるため、防寒対策は必須です。

特に11月下旬からの出雲は冷え込みが強く、風もあるため、

  • コートやダウンなど暖かい上着
  • マフラー・手袋
  • 厚手の靴下やブーツ

といった冬仕様の装備がおすすめです。

また、足場が少し暗い場所もあるので、スマートフォンのライト機能を活用する場面もありました。

ただし、神事中の使用は控えるのがマナーです。

寒さ対策として、カイロを持っていくのもおすすめ。周囲に飲み物を買える場所がないため、温かいお茶を水筒に入れて持っていくと安心です。

アクセス方法・周辺情報

▶ 場所:島根県出雲市斐川町併川(ひかわちょう あいかわ)

▶ アクセス:

  • JR出雲市駅から車で約25分
  • 公共交通機関は少なめなので、レンタカーやタクシーの利用がおすすめ

▶ 周辺情報:

  • トイレや飲食店は近くにほとんどありません
  • 神社には駐車スペースが限られているため、早めの到着をおすすめします

また、近隣には温泉地(湯の川温泉など)もあるので、神事のあとに温泉でゆったり体を休めるのも素敵なプランです。


おわりに:静かな「ありがとう」を神様へ

万九千神社での神等去出祭は、観光名所を巡る旅とはまったく違う、静かで特別な体験でした。

神様たちを「見送る」という、優しさと感謝にあふれた神事は、慌ただしい日々の中で忘れていた大切な気持ちを、思い出させてくれました。

自分と向き合うような、心を整えるような時間。

そうした時間を求めている方には、ぜひ訪れていただきたい場所です。

神様が帰る夜。
その静けさの中で、あなたもそっと心の中で「ありがとう」とつぶやいてみてはいかがでしょうか。

 

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