神社といえば、山の中腹や高台にあり、上り坂の参道を歩いて本殿にたどり着くのが一般的です。
ところが、出雲大社はそれとは逆で、参道が下り坂になっているという珍しい構造を持っています。
このような「下り参道(くだりさんどう)」は、日本全国でも非常に数が少なく、全国に約10社ほどしか存在しないといわれています。
その中でも、官幣大社という格式高い神社の中で唯一、下り参道を持つのが出雲大社なのです。
では、なぜ出雲大社の参道は「下り坂」なのか?
この記事では、出雲大社の下り参道にまつわる2つの有力な説と、そこに込められた出雲の歴史や信仰を紐解いていきます。
出雲大社とは?格式高き「縁結びの聖地」
出雲大社(いづもおおやしろ)は、島根県出雲市に鎮座する日本を代表する神社の一つです。
御祭神は大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)。
縁結び・国づくりの神様として広く信仰されています。
格式としては、明治以前の「官幣大社」という最も高い社格に属し、現在も神社本庁の別表神社に位置づけられています。
この出雲大社で特に注目されるのが、「勢溜(せいだまり)」から本殿に向かう参道が下り坂になっていることです。
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出雲大社が「下り参道」である理由とは?
理由①|神を封印する意図が込められているという説
古来より、神様は高い場所に祀るのが常識とされますが、出雲大社では参道から本殿を見下ろすという特異な構造です。
この背景には、以下のような歴史があると考えられています。
- 出雲族とヤマト政権との対立
- 「国譲り神話」による大国主命の国の譲渡
- 大和政権が大国主命を封印しようとした可能性
このように、「敵の神を丁重に祀りながらも、封じ込める」象徴としての下り参道だったのでは、という説です。
理由②|神様に敬意を払うためという説
もう一つの説は、「神様への敬意を表すための構造」です。
下り坂の参道を歩くことで、自然と頭が下がり、参拝者は謙虚な気持ちになります。
- 神に対して頭を垂れる姿勢を自然にとれる
- 俗世から神域へ入るための「精神的な降下」
- 勢溜から本殿へ「気(エネルギー)」が流れる導線
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出雲大社の「下り宮」とは?全国でも極めて珍しい神社構造
出雲大社のように参道が下り坂で、本殿が低地にある神社は、「下り宮(くだりみや)」と呼ばれます。
全国でも以下のような神社しか存在しません:
- 貴船神社(京都府)
- 日御碕神社(島根県)
- 賀茂御祖神社(京都府の一部社殿)
下り参道を歩くときのポイント
参道を歩く際は、以下の点を意識してみましょう。
- 一歩一歩を「神様に近づく儀式」として大切にする
- 自然と心が整い、神聖な気持ちになれる
- 参道全体が「精神を清める場」として作用する
まとめ|出雲大社の下り参道に込められた神秘と敬意
出雲大社の「下り参道」は、単なる地形ではなく、歴史と信仰の象徴です。
- 古代の征服と和解を示す「封印の構造」
- 神様への礼とへりくだりの姿勢を促す「敬意の参道」
- 神域へ向かうための「精神的な通過儀礼」
参道を歩むその一歩一歩が、出雲の神話と歴史につながっています。訪れる際は、ぜひこの神秘を体感してください。